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キャラクターと知的財産(20)「ゆっくり茶番劇 騒動」
- 2022/9/5
- コラム「キャラクターと知的財産」
◆ キャラクターと知的財産(20)
「ゆっくり茶番劇 騒動」
同人ゲームなどで知られる「東方Project」のキャラクターの二次創作として生まれた「ゆっくり」というキャラクターに由来する動画ジャンル名「ゆっくり茶番劇」を第三者が無断で商標登録した上で、営利目的での使用には使用料を請求すると発表したことが最近大きな話題となりました。これにはインターネット上を中心に大きな反発がありました。このため、権利者は、使用料請求について撤回することを直ちに発表しましたが、権利は保持するとしましたので、騒動はこれだけでは収まりませんでした。そして、最終的には、権利者による商標権の放棄ということで決着しました(商標権はすでに抹消済み)。
なぜ、このように一般的に使われている言葉が第三者によって商標登録されてしまうのか、疑問に感じる人も多いと思います。それは、商標法が先に出願されている商標と類似しなければ登録を認める先願主義の原則を採用しているからです。つまり、先に使用しているか否かを問わず、先に出願をした人が登録を受けられるのが原則なのです。
例外として、例えば流行語のようなものは、商品の宣伝広告等に広く使用されていたりするので、もはや商品表示と認識し得ないという観点から、類似商標の有無にかかわらず拒絶されることがあります。ですが、宣伝広告等に使用されている言葉でなければ、このような観点に基づいて拒絶することも難しいでしょう。
また、商標登録がされていなくても、商標として需要者に広く知られているものと類似する場合は、その登録を拒絶する規定もあります。ただ、今回の騒動での「ゆっくり茶番劇」はジャンル名であり、商標(自他の商品・役務を識別するための目印)ではないので、この規定に基づき登録を拒絶することも難しかったのかもしれません。
審査官は、出願された商標についてインターネットで調べたりするでしょう。しかし、常に期待通りの審査をしてくれるはずという思い込みは危険です。そのため、定期的にインターネット上で公開されているデータベースをチェックをしたり、必要に応じて、情報提供制度や異議申立制度を活用するなど、しかるべき対策を講じることをお勧めします。
(石塚特許商標事務所 弁理士・石塚勝久)
《石塚勝久氏・プロフィール》
1973年生まれ。2000年に大手特許事務所に入所。国内外の商標・意匠業務を専門に扱う。2015年に独立し、石塚特許商標事務所を開設。
当コーナーは、キャラクターにまつわる法律問題についての連載コラムです。
キャラクタービジネスに関わる初級・中級・上級者に向け、不定期に掲載します。
キャラクターを守る知的財産権のプロフェッショナルの弁理士・石塚勝久氏に、わかりやすく教えていただきます。是非、お楽しみください。
過去の連載は、こちら から見られます。
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